2011-01-01から1年間の記事一覧

時代文化的要因−広汎性発達障害と適応障害

** 時代が締め出すこころ 精神科外来から見えること 青木省三 ** 著者の青木省三氏は、雑誌『こころの科学』(日本評論社)の監修者として、お名前は知っていました。著書を読ませていただくのは、おそらく初めてではないかと思います。精神科医として仕…

**もうすぐ再開します**

今、新しい原稿を準備しています。もうすぐ再開できる予定です。 お休みしている間、驚いたことに、ブログ全体へのアクセス数があまり減りませんでした。古い記事にも、常時どなたかがアクセスして下さっているということだと思います。このことは、私に大き…

**ブログの更新をすこしお休みします**

このブログにお越しくださいまして、ありがとうございます。 家族(義父)が急病になったため、しばらくの間、こちらのブログの更新をお休みします。アクセス数も増えて、ブログらしくなってきたところで残念ですが、今は、本来の主婦業に専念したいと思いま…

人類みな自閉症?AQテストの見方

** 自閉症スペクトラム入門 脳・心理から教育・治療までの最新知識 サイモン・バロン=コーエン ** アスペルガー症候群かどうか自己診断、スクリーニングできるAQ(自閉症スペクトラム指数=私のブログ内ではAQテストと表記しています)というのがあ…

赤ちゃんと共感覚

** 赤ちゃん 成長の不思議な道のり 安川美杉 ** 脳の「刈り込み」って聞いたことありますか?赤ちゃんに接している若いお母さんなら、もしかしたら、育児情報として知っているかもしれません。この本は、テレビ番組『NHKスペシャル』2006年10月の放送…

<番外編>知能検査が日本に初めて入ってきたころのこと

一つ前の記事は、『知能指数』(佐藤達哉 講談社現代新書)を読んで、知能検査の歴史について書きましたが、この本のなかで、ある人の名前を見つけて嬉しくなりました。三田谷啓(さんだや ひらく)という人です。大正4年、ドイツのボーベルタークの改訂版知…

知能指数(IQ)はどこから来たか

** 知能指数 佐藤達哉 ** IQを上げるというハウツー本がたくさん出版されています。IQが高いとか低いとかいうのは何を意味しているのか、本当に私たちはわかっているのでしょうか?漠然と、頭の良さ、知的な能力、といったものを測っているという認識の…

☆レビューのレビュー(その4)☆

とうとう40冊読みました。ブログを始めた頃は週1回更新で1年50冊読めるかなと思っていたので、ペースとしては少し遅いです。でも、40冊読んだことで何かが見えてきた気がしています。ここ最近の10冊を読んでいる中で、思い起こしたことがあります。ブログを…

あの文豪、あの映画監督もアスペルガー症候群!?

** 漫画でもわかるアスペルガー読本 編著:井上敏明 漫画:森野としお ** アスペルガー症候群の人は、数学や物理学、工学などが得意な人に比較的多く、文系でも知識の収集に徹していて人間の心理には疎く、世間知らずである、というイメージがあります。…

学校での合理的配慮はハイブリディアンへの模索

** 発達障害の子どもの「ユニークさ」を伸ばすテクノロジー 中邑賢龍 ** ちょっと、想像してみてください。教室にワープロを持ち込んでノートを取っている子がいたり、計算問題を電卓で解いている子がいたら、どんな感じですか? サングラスをかけていた…

人はみな傷つきながら成長するのだけれど

** きよしこ 重松 清 ** この本の物語の主人公の少年は、吃音(どもり)があります。小説全体の始めと終わりに作者自身が出てくる文章がついていて、作者の重松清さん自身の体験を元に書かれた小説であることがわかります。主人公は、小学校1年生から高…

発達凸凹とトラウマ

** 発達障害のいま 杉山登志郎 ** 母子アスペ、不登校とひきこもり、選択性かん黙、やせ症、強迫性障害、うつ病と双極性障害、気分障害、統合失調症、多重人格、大人の発達障害、クレーマー、それに2E教育。。。。このブログでも取り上げたいと考えてい…

<番外編>視覚型タイマーの普及と価格破壊を!

今回は本ではなくて、この商品について書きたいと思います。 残り時間が一目でわかる タイムタイマー (M) アラーム付き出版社/メーカー: K2Mメディア: おもちゃ&ホビー購入: 2人 クリック: 26回この商品を含むブログ (1件) を見る タイムタイマー。私がこ…

多数者と少数者の架け橋になる

** 色弱が世界を変える カラーユニバーサルデザイン最前線 伊賀公一 ** 『色覚障がい者』とマスコミでは表記しているようです。古くは、色盲といわれましたが、全く色彩感がないのではありません。多数派とは違って見えます。2002年までは小学校で色覚の…

元祖アスペルガー型の自閉症

** 現代のエスプリ No.527 発達障害とパーソナリティ障害 新たなる邂逅 ** 前回の続きで、このムックをもう少し読みます。医学的に難しいところもありますが、私たち一般の人間としても、大筋として理解しておきたいと思うポイントがありました。ハンス…

1965年にハンス・アスペルガーが来日していた事実

** 現代のエスプリ No.527 発達障害とパーソナリティ障害 新たなる邂逅 ** 1965年、第6回日本児童精神医学会に、オーストリアの小児科医ハンス・アスペルガーが招かれ、特別講演をした、ということが、この本(ムック)の最後に置かれたインタビュー(村…

自己愛と自己肯定感はこんなにも違う

** 自己肯定感って、なんやろう? 山田喜代春・版画 高垣忠一郎・文 ** このブログでも、ちょこちょこ使ってきたかもしれません。 自己肯定感 ということばです。私も、あいまいに使ってきたかも知れません。この本に噛み砕いて説明してあって、なるほど…

しみこみ型の学びと自閉症

** ロボット化する子どもたち 「学び」の認知科学 渡部信一 ** ロボットと自閉症はなんとなく似ています。 決められたことは正確にできる。でも、想定外のことにはまったく対処できない。応用がきかない。 確かに言われればその通りかもしれません。でも…

家族の視点から今の世の中を見回してみると

** 新編 家族の練習問題−木陰の物語− 団士郎 ** 練習問題といっても、クイズ形式で何らかの正解を求めるような本では、ありません。 漫画風のイラストと短いことばで、現代日本が抱えるいろいろな家族の<事情>が表現されています。 家族療法のワークシ…

良寛さんの書を味わう

** ほっとする 良寛さんの般若心経 加藤僖一 ** 良寛は、江戸時代の禅僧、歌人、漢詩人、そして書家として知られる人で、子供向けの伝記などにも紹介されています。童心になって子どもと遊び、子どもたちが日が暮れて帰ってしまっても、たった一人でかく…

☆レビューのレビュー(その3)

10冊ごとに振り返りをしています。 ちょうど30冊紹介しました。そして、このブログを開設してからほぼ1年が経ちました。 最初はおっかなびっくり、手探りで始めたこのブログも、少しずつ成長しました。 最近の10冊および番外編は、すべて日本ブログ村の人…

頚性うつ−首こりと自律神経症状―

**首こりは万病のもと うつ・頭痛・慢性疲労・胃腸不良の原因は首疲労だった! 松井孝嘉 ** 著者の松井孝嘉氏は、脳神経外科医で、30年以上首の研究を続け、自律神経失調症の治療法を世界で初めて完成させた、と、略歴にあります。この本には、その画期…

<番外編>アスペルガー感性とAQテスト

毎回一冊ずつ本を紹介していますが、今回は番外編です。 こちらのニュースについて、書いてみたいと思います。 マネジメントベース、「大人の発達障がいに関する調査結果」を発表 組織・人材に関する各種アセスメントの開発・提供を行う株式会社マネジメント…

発達障害がなぜ統合失調症と誤診されてしまうのか

**精神科セカンドオピニオン2 発達障害への気づきが診断と治療を変える 適性診断・治療を追求する有志たち** 『精神科セカンドオピニオン』というのは、実在したウエブサイトの名前です。2005年10月に開設され、掲示板に寄せられた質問に答える形で、診…

障害であることは事実だが、同時に個性でもある

**まっくらな中での対話 茂木健一郎withダイアログ・イン・ザ・ダーク** 視覚障害者という人たちは、すぐ見分けがつくし、少なくとも、発達障害に比べれば、外から見て、わかりやすい、と言っても、怒られないと思います。でも、視覚障害者がどんな世界…

文脈というものは案外奥深い

**わかったつもり 読解力がつかない本当の原因 西村克彦** 発達障害を勉強していると、文脈がわからない、行間が読めない、ということが、脳の障害とされているというのは、どう考えていったらいいのだろうか、悩むことがあります。 だいたい、文脈って…

ホモエコノミクスとDSMで読み解く時代

**<不安な時代>の精神病理 香山リカ** DSMというのは、アメリカ精神医学会の診断マニュアルのことです。"Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders"の略語で、初めて作られたDSM-I(1952年)から、順次改訂が加えられ、現在は200…

よりよく生きるための眼の力

**眼力(めぢから)の鍛え方 石垣尚男** メヂカラ、といっても、アイメークや魅力的な目線の使い方の話ではありません。スポーツ選手がより上達するために必要な、眼の力について書かれています。最近は発達障害者の目の機能向上についての本もいくつか…

場の空気が読めない子どものその後

**王様は裸と言った子供はその後どうなったか 森 達也 ** 本のタイトルを広告で見かけたときから、とっても気になっていました。王様は裸といってしまう子供は、ASDの子ども像にぴったり当てはまってしまう。童話『裸の王様』に出てくる、正直者の子ども…

コミュニケーション不全が精神に与える影響

**中途失聴者と難聴者の世界 見かけは健常者、気づかれない障害者 山口利勝** 聴覚の障害者といえば、ろう者 というイメージがあるかもしれません。ろう者は手話を使い、音の無い世界に生きていて、そうでない人は、聞こえている=普通 というざっくりし…