2012-01-01から1年間の記事一覧

◆番外こらむ◇音楽の学習障害ってないよね。。

発達障害って何だろう、って考え始めてから、ずっと気になっていたことがあります。私は子どもの頃からコーラスをやっていますが、世の中には音の高さを認識しにくいと思われる人たちがいますよね。聞いた音と同じ高さで声を出して調子を合わせてくださいと…

20世紀の社会状況から発達障害を読み解く

** やさしい発達障害論 高岡健 ** 著者は精神科医の高岡健氏。発達障害とはそもそも何なのか、どういうものと理解するべきなのか。 それをこの言葉が使われ始めた社会や経済の状況との絡みで説明しています。やさしい発達障害論 (サイコ・クリティーク)…

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ブログ『雨の日は本を広げて』をご愛読いただいている皆様、いつもありがとうございます。右も左もわからない状態からとりあえず始めたブログですが、おかげさまで、10000ページビュー/月 を超える読者に来ていただけるようになりました。暖かいコメントもい…

☆レビューのレビュー(その8)☆発達障害とその周辺との境界線が見えない

とうとう80冊読みました。目標まであと20冊です。私は精神医学や心理の専門家ではありません。子育ての中で発達障害と出会い、あくまでもこの道の<しろうと>としての素朴な感じ方を大事にしながら、市販されている本を読みすすめてきました。発達障害とい…

慢性のうつ病は性格の問題じゃなくて病気と考える

** 対人関係療法でなおす気分変調性障害 自分の「うつ」は性格の問題だと思っている人へ 水島広子 **対人関係療法というのは、1960年代から米国を中心に開発された精神療法です。精神療法というと、認知行動療法というのがわりと知られていますが、これ…

自分の身体のしくみを知ることで動きが変わってくる

** 音楽家ならだれでも知っておきたい「からだ」のこと アレクサンダー・テクニークとボディ・マッピング バーバラ・コナブル **アレクサンダー・テクニークというのは、自分の身体の不必要な癖をやめて本来の動きを取り戻す方法論として、アレクサンダ…

不登校と睡眠の深い関係

** 不登校外来 眠育から不登校病態を理解する 三池輝久/編著 **神戸市に『子どもの睡眠と発達医療センター』という場所(※注)があります。ここのセンター長の三池氏と、熊本大学医学部発達小児科の5人の著者により、子どもの睡眠についての新しい研究が…

先天性の相貌失認は自閉症スペクトラムだけに限らない

** 心の視力 脳神経科医と失われた知覚の世界 オリバー・サックス(アメリカ) **オリバー・サックス氏は、脳神経科医で作家、映画『レナードの朝』の原作者である他、『火星の人類学者』でテンプル・グランディンを紹介したことでも知られる方です。こ…

言葉を話すかどうかで知的能力を判断することが間違っているかもしれないと考えてみる

** ぼくは考える木 自閉症の少年詩人と探る脳のふしぎな世界 ポーシャ・アイバーセン(アメリカ) **自閉症スペクトラムのことを知る上で欠かせないのは、言葉の出ない重度の自閉症の人のことです。自閉症とは本来そのような人たちのことを指すのであり…

教育問題からみえる空間と時間と資源の感覚

** 欲ばり過ぎるニッポンの教育 刈谷剛彦+増田ユリヤ **教育問題に詳しい社会学者と、教育現場を取材してきたジャーナリストの対談です。刈谷氏は、題名のとおり、日本の教育は欲ばっていっぺんにやろうとしすぎだという主張をされています。そこに増田…

<番外編>アメリカから見た「空気が読めない」を気にする日本

ひとつ前の記事でとりあげた『ダイバーシティ』に、現代の日本社会の、「空気が読めない」人を排除する傾向について述べた部分がありました。私は50年近く生きていますが、この傾向が日本の社会全体に広がってきたのはここ10年ぐらいのことだと感じていま…

多様性を認める社会はひとりひとりの生きる力と深く関わっている

** ダイバーシティ 生きる力を学ぶ物語 山口一男/文 森妙子/挿絵 ** ダイバーシティという言葉が、多様性という意味で普及しつつあることは知っていました。もっと知りたいという軽い気持ちで手に取った本でしたが、泣きました。不思議な、素敵な本です…

<番外編>日本の精神医学と「脳」の関係について

ひとつ前の記事で取り上げた本『うつ病の脳科学』(加藤忠史)は、ある意図を持って書かれているようにも読めます。 現状の精神医療の問題点を克服するには、病理学に基づいて精神疾患の疾患概念を再構築し、科学技術に基づく新時代の精神科医療を実現しなけ…

「うつ」を脳科学の最先端から考える

** うつ病の脳科学 精神科医療の未来を切り拓く 加藤忠史 ** 発達障害の当事者で、うつを併発しておられる方は多数あります。また、親御さんがうつになるケースが多いというのも報告されているようですし、実際多いと感じます。うつとは何でしょうか。「…

うつが人間関係を壊す過程が見えてくると

** 「困った人」にひそむ「うつ」 性格の問題と片付けてしまう前に 下園壮太 ** かなり前に読んで、どうしても気になっていた本でした。著者は「うつ」に関する著書やDVDで知られるカウンセラー。純粋に「うつ」のことを書いた本です。でも、発達障害…

さまざまな要素が絡み合うひとりひとりを見つめる

** ドナ・ウィリアムズの自閉症の豊かな世界 ドナ・ウイリアムズ(オーストラリア)** 世界的に有名な自閉症スペクトラム当事者のひとり、ドナ・ウィリアムズによって書かれた、自閉症論です。彼女は1963年生まれ。被虐待経験や家出といった壮絶な子ども…

☆レビューのレビュー(その7)☆発達障害は精神疾患なのか発達の個性なのか

この10冊を読みきるのは、なかなか大変でした。家族の状態や自分の立場が変わったことに加え、新しいことにもいくつか挑戦したことで、自分の生活パターンを作っていくことが難しいと感じました。ちょっとスケジュールが立て込むと体調を崩し、体力や集中…

<番外編>自閉症スペクトラムに関係するDSM−5の動向について

雑誌『臨床心理学第12巻第5号―特集 発達障害者支援』(2012年9月号)p.685〜p.686に、「DSM−5と発達障害」(黒木俊秀)という記事が載っています。前回の理解を踏まえて、臨床心理の専門家の方々が読む雑誌をちょっと覗き見しながら、DSMについても…

精神科の診断基準DSMの基礎知識

** こころのりんしょうà・la・carte Vol.28 No.4 精神科診断の新しい流れ:病名だけが診断ではない? ** 発達障害に接することになるきっかけはいろいろあると思いますが、関わる以上この用語は避けて通れないと思います。アメリカ精神医学会が刊行して…

<番外編>2E教育も能力差を前提にしているアメリカ流

久しぶりの番外編です。ふたつ前の記事『アタマの良さにも個人差があると考える時代がやってきた』で、とりあげた、2E教育についてです。記事の中で取り上げた本『ワードマップ 認知的個性―違いが活きる学びと支援』の中に、6ページだけですが、2E教育に…

『学校』をみんなで語り合える世の中にしたい

** 学校って何だろう 教育の社会学入門 刈谷剛彦 ** 社会学者の刈谷剛彦さんが、中学生新聞向けの連載として書かれたものをまとめたものです。学校とは、とくに日本の学校とは、どういうものなのか。 どうして毎日行かなければならないのか、どうして校…

アタマの良さにも個性があると考える時代がやってきた

** ワードマップ 認知的個性 違いが生きる学びと支援 松村暢隆・石川裕之・佐野亮子・小倉正義/編 ** 教育学の分野の本です。子どもの発達をどうとらえていくか、という視点から、人間の認知の個性を論じる内容です。ここで発達障害がどう論じられている…

脳・感情・身体は有機的につながっている

** デカルトの誤り 情動、理性、人間の脳 アントニオ・R・ダマシオ/著 田中三彦/訳 (アメリカ)** 以前の記事『脳で診る発達障害−4つのタイプで長所を活かす(2012/05/07)』で紹介した、『活かそう!発達障害脳―「いいところを伸ばす」は治療です。』(…

体幹、肩甲骨、股関節を意識につなげるコアドリル

** 体が硬い人のためのストレッチ 石井直方/監修 荒川裕志/著 ** 身体の話題は発達障害には欠かせない、と、私は最近確信してきています。 発達障害を抜きにしても、誰でも脳を良い状態で使おうと思ったら、身体ともっと対話しなければならないと思い始…

家族との関係から発達障害を見直してみる視点

** シック・マザー 心を病んだ母親とその子どもたち 岡田尊司 ** 同じ著者の本が重ならないように配慮はしているのですが、以前取り上げた『愛着障害 子ども時代を引きずる人々 (光文社新書)』とからめて、この本を読みたいと思います。発売日が数ヶ月し…

ワーキングメモリを鍛えることで、発達障害が改善するかもしれない

** オーバーフローする脳 ワーキングメモリの限界への挑戦 ターケル・クリングバーク(スウェーデン)** 訳者あとがきによると、スウェーデンのカロリンスカ研究所で発達認知神経科学の教授を務める先生が、一般向けに書かれた本なのだそうです。ワーキ…

人と違うことをプラスに考えられるための環境づくり

** 「読む」「書く」は苦手だけれど DX型ディスレクシアな僕の人生 藤堂高直 ** ディスレクシアで建築家の日本人がイギリスで活躍しているという話は、テレビで見たことがありました。NHKスペシャル『病の起源「読字障害」』(2008年放送)だったと記憶して…

最近の脳科学が教えてくれた「私の知らない私」

** 単純な脳、複雑な「私」 池谷裕二 ** 池谷裕二さんは、「脳の可塑性」研究の第一人者で、東京大学で研究されている薬学博士という肩書きの方。にもかかわらず(?)、一般に向けて上手に説明するすご腕の持ち主です。この本は、出身校である静岡県立…

自分の周りの人間関係を見つめなおすこと

** 自分の小さな「箱」から脱出する方法 人間関係のパターンを変えればうまくいく! アービンジャー・インスティチュート(アメリカ) ** ふらりと出かけた本屋さんで、ふと目に止まった本を何気なく購入して、読まずに積み上げている、なんてことは、た…

☆レビューのレビュー(その6)☆21世紀の発達障害観を目指して

この10冊を読んでいる間に、義父が他界し、主人が失業(定年退職扱いです)しました。義父や主人については、これまで表面的にしか理解していなかったことが、もっと深く理解できる良い機会だったように思います。 この10冊では、新しい言葉を2つ学びま…