2023年の私から

2023年1月にこの記事を書いています。フロびぃです。 このブログ「雨の日は本を広げて」は、2013年まで更新されていたものです。当時、発達障害というものを理解することを目的にいろんなジャンルの本を並べ、本の紹介というよりも、自分なりに考えたことを…

このブログで読んだ本を並べてみました

100冊の本を読んで発達障害について考えてきました。私の中ではブログ全体がひとつのブリコラージュ、パッチワークのようなものです。最後に表紙を並べて全体を眺めてみたいと思います。って何だろう (講談社現代新書)" title="ソーシャルブレインズ入門――っ…

☆レビューのレビュー(その10)☆発達障害からみえるポスト・モダン

おかげさまで、目標の100冊を達成できました。ありがとうございます。 最後の一冊は脳の多様性についてでした。(→記事) 生物や文化の多様性については様々なテレビ番組などでも紹介され、私たちの認識も少しずつ変わってきています。思い出していただきた…

標準的な脳などどこにもない

** 脳の個性を才能にかえる 子どもの発達障害との向き合い方 トーマス・アームストロング(アメリカ) ** 障害じゃなくて個性と考えましょう、というようなフレーズをよく聞きますが、どこまで本音なのかわからないことがよくあります。優劣じゃなくて違…

<番外編>自閉症を関係性の障害と考えると

前回、前々回と、自閉症は人と人との関係性の障害かもしれないというような話を書いているのですが、 関係性なんてものに実体はないんじゃないかという感想を持つ人もそれなりいいらっしゃるんじゃないでしょうか。関係性は目に見えないし、とらえどころがな…

<番外編>何を学習するかが遺伝している

関係性の発達を扱った本を2冊読みましたが、読んでいて思いだしたのが、 このブログのずいぶん最初の方で読んだ、 『人間は遺伝か環境か?遺伝的プログラム論 (文春新書)』(日高敏隆)です。 (→記事へ)鳥のひなを親鳥と隔離して育てるとさえずりを覚えな…

自閉症の豊かな世界とそれを活かす子育て

** 自閉症の関係障害臨床 母と子のあいだを治療する 小林隆児 **親子の関係性の発達という観点から自閉症の治療を試みた記録が3例、収められています。東海大学健康科学部に設置したMIU(母子治療室)で、母と子の遊びに共同治療者がかかわった数年間を…

子どもはどう育つのかどう育てるのかわかっていることとわからないこと

** 育てる者への発達心理学 関係発達論入門 大倉得史 **関係発達論というのは、鯨岡峻という日本の発達心理学者が比較的最近提唱した考え方なのだそうです。一昔まえに発達心理学を勉強してそのままの人ははじめて聞く名前かもしれません。この本は、そ…

<番外編>あと3冊。もうひとつのブログも終了します。

97冊読んだことになります。発達障害をテーマに100冊の本を読むということを自分に課してきたわけですが、とうとう、あと3冊になりました。ご愛読ありがとうございます。このブログに平行して、もうひとつのブログ 晴れの日は、えっちらおっちら を進めてき…

脳と腸の深い関係が医学を変える

** 内臓感覚 脳と腸の不思議な関係 福土 審 **心身医学というジャンルがあるそうです。この本の著者は、ストレス性の病気、特に過敏性腸症候群(IBS)を専門に研究している方です。緊張が高まると胃腸の具合が変わるという体験は誰でもしたことがあると思…

10歳の壁と社会性の発達を考えてみる

** 子どもの「10歳の壁」とは何か?乗り越えるための発達心理学 渡辺弥生 **子どもの発達にとって、9歳から10歳ぐらいの変化は大きなもののようです。確かにこの辺りから子どもは少しずつ大人と同じ領域に入ってくるように思いますし、不登校やいじめな…

異常とみなされることで精神の病ははじまる

** 異常とは何か 小俣和一郎 **タイトルには、異常、としか書いていませんが、精神異常とはなにか、という本です。著者は、精神科医であり、精神医学史の研究家でもある方です。この本を読みながら、私たちが何気なく受け入れている、精神の病気、という…

精神科の薬の歴史は精神科の病気の歴史

** 心の病の「流行」と精神科治療薬の真実 ロバート・ウィタカー(アメリカ) **アメリカのジャーナリストによって書かれた、精神科治療薬の歴史や背景についての報告です。著者がこの問題に取り組むようになったきっかけは、統合失調症の転帰について、…

受け止める大人の力と子どもの育ち

** 現代<子ども>暴力論 芹沢俊介 ** 25年ちかく前の1989年に出版された本で、私が読んだのは加筆、増補されて1997年に出されたものです。私より先に読まれた方もたくさんおられると思います。”イノセンス”というキーワードで、時代の中の子どもをめぐ…

イメージを育てることで脳と身体がつながっていく

** 脳のなかの身体 認知運動療法の挑戦 宮本省三 **認知運動療法は、イタリアで発案されたリハビリテーションの方法です。脳卒中の半身麻痺や高次脳機能障害などに効果が認められ、日本でも普及がはかられています。脳科学、哲学、発達心理学などを総合…

<番外編>科学的理論とつきあう知恵

50歳を間近に再び学生をやっています。今期は『臨床心理学特論』の講義を聴いているのですが、うつ病(気分障害)について、教科書にこういう記述がありました。 原因不明の脳機能変調による典型的うつ病をはじめとして、脳血管障害の後遺症として現れる血管…

世間のしろうと理論のしくみを知る

** 常識の社会心理「あたりまえ」は本当にあたりまえか 卜部敬康・林理 編 ** 私たちの<常識>は、学校で習ったことや、新聞やニュースで知った情報や、お母さんや近所のおばさんに聞いたこと、学校のうわさ、漫画やドラマから、などいろんなもので成り…

☆レビューのレビュー(その9)☆自分で自分を育てることは、できる

90冊を読み終え、100冊までとうとう残すところ10冊となりました。 ここまでの10冊は、本の内容をそのまままとめて伝えるブログからの脱皮を目指して、試行錯誤しながらいろんな記事を混ぜ込みました。読みにくい点があったかもしれませんが、お付き合いいた…

<番外編>脳機能障害の3つのレベル−私なりの考察−

前回に続いて、これも私なりの考察です。前回は、脳の機能障害は一生変わらないということを前提に論をすすめましたが、この部分を注目してみたいと思います。発達障害に関して、脳の機能障害であるという言い方がよく使われますが、いろいろな本や雑誌を見…

<番外編>自閉症のふたつのスペクトラム−私なりの考察−

前回とりあげた本『自閉症スペクトラム障害』(平岩幹男)(→記事)のなかに、 自閉症の「スペクトラム」についての平岩氏の考え方を述べた部分がありました(pp43-44)カナー型自閉症を例にとって説明してあります。同心円を描いて真ん中にコア群、その周り…

療育の進歩が自閉症への認識を変えていく

** 自閉症スペクトラム障害−療育と対応を考える 平岩幹男 ** 岩波新書です。自閉症スペクトラムについて初めて学ぶ親御さん向けの内容ですが、社会への一般的な理解を広める意図も感じられます。既にASDのことを学んだ、初歩的なことはわかっている、…

健康的な人と人とのぶつかりあいを回復していくこと

** ウィニコットがひらく豊かな心理臨床 ほどよい関係性に基づく実践体験論 川上範夫 **ウィニコットはイギリスの小児科医で精神分析家です。精神分析というとよく知られているのはフロイトやユングですが、その後イギリスで発展した精神分析にはいろい…

<番外編>ひとりでできる体と向き合うワーク

前回予告しました、アレクサンダー・テクニークのDVDを紹介します。私はこのDVDを書店の心理関係の棚で見つけて購入しました。アレクサンダー・テクニークは心と体を統合することを目指すもので、体を鍛えるとか体型を整えるというような目的のものとは少し…

自分自身を深くとらえ返すことが現代日本のへつながる

** アレクサンダー・テクニーク やりたいことを実現できる<自分>になる10のレッスン 小野ひとみ ** title=関連記事])この本は、レッスンの実際を交えながら、アレクサンダー・テクニークがどのようなものか、その基本的な考え方や活用法を説明したも…

◆番外こらむ◇みんな違って、みんな<いい>?

皇居の正門前へ行ってきました。二重橋のあるところです。近くには官庁をはじめ、大手企業や銀行のビルも立ち並んでいますから、仕事で通りかかる人もたくさんいるのでしょうが、私は今まで、この場所には多分来ていないように思います。 東京駅の方からビル…

察しの文化の中で身につける「配慮ある自己主張」

** 心理学者に学ぶ 気持ちを伝え合う技術 榎本博明 **コミュニケーション、特に気持ちを伝え合うことに悩みがある人は大勢いると思います。いわゆる自己啓発系の本ですが、大学の先生による論理だてた解説がわかりやすいです。心理学者に学ぶ 気持ちを伝…

人と対峙する精神医学から学ぶこと

** こどものこころを見つめて 臨床の真髄を語る 対談:小倉清・村田豊久 聞き手:小林隆児 **小倉氏は昭和7年生まれ、村田氏は昭和10年生まれ。現在70歳台後半に差し掛かっておられる、こどもの精神医療の重鎮とも言える先生方の対談です。子どものここ…

◆番外こらむ◇日本の伝統的な育児もひとつではない?

ひとつ前の記事で、こう書きました。 日本はもともとスウォドリング型だったのに、いったん<科学的>な育児を取り入れて、再び日本的な育児に回帰しようとしたときに、抱っこ型のイメージにすりかわってしまった こう書いてしまってから、どうも落ち着かな…

人類の伝統的な子育ては一つではない 

** 育児と日本人 正高信男 ** 人間の赤ちゃんは、母親の腕に抱かれて育てられ、やがておすわり、はいはい、つかまり立ちを経て、歩き出すというのが、まあ定番ですよね。寝かされていた赤ちゃんが、不安になって泣き出すと、お母さんが抱き上げてあやす…

◆番外こらむ◇”原因帰属の誤り”を学んで思うこと

50歳手前になって、放送大学大学院で心理や教育を学んでいます。 今期学んだのは、『現代社会心理学特論』(森津太子)で、比較的新しい社会心理学の知見を網羅的に学びました。 私が大学を卒業したのは1980年代の半ばですが、教科書に出てくる研究のほとん…